接続詞で書き手の思いを伝える
接続詞は,一般に,語,句,文をつづける語であると定義されており,物と物とを結びつける連結器の役目をする語と考えられている.しかし,それだけが接続詞の役目ではない.いままでに述べたことをうけて,つぎにどういう方向に書き手が論旨を展開していくかという書き手の立場を,読み手に概念的にではなく,直接的に伝える手段として接続詞を使う.わが国の代表的な文法学者である時枝誠記氏も『日本文法口語篇』(岩波全書)で,そう説いている.
前に紹介したジャック・モノーの言葉の中に出てくる「ただし」を,この観点から読み直してみると,ひと味ちがった文としてとらえることができる.
接続詞はこのように,短いが,味のある言葉である.接続詞を巧みにいかすことによって,書き手の思いを事前に伝えることができる.このような場面で効果を発揮するのが,接続詞などの「つなぎ語」である.
つなぎ語には,接続詞の他,副詞,副詞句などもある.つなぎ語は,以上の効果に加えて,文章にリズム感をつける役割もあわせもっている.
「文は短く書け」と主張しているが,文を短くすると,文間のリズムが切れてしまう.それをつなぎあわせるのも,つなぎ語の役目である.いい文章を読んでいて気がっくことに,接続詞の巧みな用法がある.
文と文のつなぎ方には,以下のように種類がある.
①順接を表す接続詞
したがって,そこで,だから,ゆえに,すると,そこで
つぎに具体的な例をしめすとき,または言い換えをするとき,結果をしめすときに使われる.
②逆説を表す接続詞
しかし,だが,ところが,でも,が,けれども
逆の意見を述べるとき,異なる意見を紹介するとき,限定をしめすときなどに使う.
③並列・追加を表す接続詞
および,そして,また,加えて,ならびに,その上,なお,しかも,それから,それに,さらに
④選択を表す接続詞
または,あるいは,それとも,もしくは
いくつかの例を紹介するときに使う.
選択を表すとき,話し言葉では「と」「や」などを使うが,正式な仕事文では,「あるいは」「または」を使う.使い方に注意が必要である.
AまたはB,あるいはその両方のように,「または」は文中で比較して小分けに,大きく分けるときは「あるいは」を使うようにする.
⑤説明・補足を表す接続詞
つまり,なぜなら,ただし,すなわち仕事文では,頻繁に使われる接続詞である.
⑥話題の転換を表す接続詞
さて,では
これらの接続詞を文と文のあいだに適切に入れることによって,読み手にたいして,書き手がいまから述べようとしている情報の一部を認識させることができる.そして,文章全体にリズム感をつけることもできるし,なめらかにすることもできるのが接続詞である.
接続詞ではないが,いくつかの言葉が結びついて,接続詞と同じような働きをするばあいもある.
順接:このため,そうだとすれば,このようなわけで
逆説:その反面,そうはいっても
並列:それと同時に,これとともに
説明・補足:要約すると,言い換えれば,その理由については,なぜかというとなどの表現もあわせて記憶しておくといい.