膜性腎症

 成年から中高年にかけて好発するネフローゼ症候群で、比較的ゆっくりと浮腫があらわれてきます。組織学的検査では、糸球体の基底膜というところの尿腔側に、原因と考えられる免疫複合体が沈着し、基底膜が肥厚します。

 欧米人と日本人では、腎機能の予後にかなり差があり、欧米人では5年後に腎機能が低下し、腎死に至る例が30~40%みられますが、日本人では予後良好で、腎不全に至る例はあまり多くありません。

 ステロイド剤が奏功する例もみられますが、微少変化型に比して、効果もゆるやかにあらわれてくる例が多く、また全く無効な例もみられます。

 欧米では、膜性腎症の予後がわるいので、かなり強力な治療法がとられ、免疫抑制剤や抗凝固療法が試みられています。

 日本人では比較的予後良好な疾患と考え、ステロイド剤の効果がみられない場合、その副作用を考えて、必要以上に持続することなく、利尿剤などを使用し、日常生活に支障がないように浮腫の軽減巻はかる方針がとられます。また持続するネフローゼ症候群により、血液が固まりやすい状態になっているので、血栓予防のための種々の抗血小板薬が投与されます。

 小児の膜性腎症はまれであり、肝炎ウイルス保持者や、膠原病などの全身性疾患に附随する例でみられます。