悪性黒子

悪性黒子 lentigo maligna 〔LM〕

 [同義語]黒色癌前駆症melanotische Pracancerose 〔Miescher 1933〕、 infective melanotic freckle 〔Hutchinson 1892]、 lentigo malin de vieillard 〔Dubreuilh 1894〕、melanose circonscrite precancereuse〔Dubreuilh 1912]、 melanoma in situ 〔Becker〕

 〔症状〕小さい褐~黒褐色の斑として始まり徐々に拡大、形は不規則で凹凸し、あるいは連圏状となり、色調も濃淡不平等。顔面に好発〔まれに体部〕。

 色素斑上に隆起が生じ、黒色調も強くなって来たならば、悪性黒色腫に進行したと考える。この悪性黒色腫(lentigo maligna melanoma : LMM)は他の素地より発したそれに比べて予後はやや良い。

 〔組織所見〕

 1)初期:基底層の色素沈着増加〔一部基底層上部も〕、基底層メラノサイト数がやや増加して並びが不規則となり、真皮上層にメラノファージ、軽い炎症性細胞浸潤、弾力線維変性。

 2)進行期:数が徐々に増加し、一部で連続性に(palisading)、また付属器上皮に沿って増加・次第に異型性を増す。

 3)最盛期:メラノサイト数が増加して基底細胞の数を超え、境界部に不規則に塊状となる。形は細長く紡錘状、核は細長くクロマチンに富み多形となり、異型性が強くなる。毛包に沿って深く、また表皮上層にも及び、メラニンを多く含む。真皮上層には多数のメラノファージと帯状の細胞浸潤をみる。

 4)悪性黒色腫への進行:以上のradialの拡大よりverticalな進行となる。

 〔鑑別診断〕老人性色素斑、扁平母斑、色素欧母斑。

 〔治療〕軟X線照射〔特に境界線〕、切除、冷凍療法。