成年後見制度の導入

 

 2000(平成12)年4月から、介護保険制度が導入された。この制度では、要介護状態になった場合、これまでのように、公的機関が手続きを促してくれるのではなく、介護を受ける人が、自分で介護認定の申請をし、介護サービスの内容を選び、契約の手続きをしなければならなくなった。しかし、判断能力が不十分な人が、自分の判断で手続きをすることは困難である。したがって、そうした人たちに対する法的な支援が必要となった。新しくてきた成年後見制度は、こうした人たちをバックアップするための制度である。

 1 意義

 成年後見制度は、判断能力が十分でない痴呆性高齢者、知的障害者精神障害者自閉症や事故による脳の損傷や脳の疾患などによる精神上の障害者を保護する制度である。

 1999年(平成11年)12月1日に、衆議院で可決成立し、2000年4月から、介護保険制度の導入と同時に施行された。

 これまで、精神上の障害で、判断能力が十分でない人のための制度として、「禁治産制度」「準禁治産制度」があった。この制度では、判断能力が十分でない人に対して、後見人または保佐人をつけることになっていた。しかし、この制度は、100年以上も前につくられたものがあり、「判断能力が十分でない人」の保護というより、むしろ取引の安全、家の財産の維持をはかるための制度であった。

 また、「家産を治めることを禁じられた人」という呼び名や、禁治産者であることが戸籍に記載されることに抵抗感があったため、申し立て件数は、これまであまり多くはなかった。しかし、現在は平均寿命が伸び、100歳以上の高齢者も増えており、また資産をもつ高齢者をターゲットにしたトラブルも増加している。こうしたことから成年後見制度が制定されることになった。

2 成年後見制度の仕組み

 成年後見制度は、精神上の障害により、判断能力が十分でないため、契約などの法律行為をする際の意思決定が困難なため、本人が損害を被ることのないように、後見人がその不十分な判断能力を補って、本人の権利を守るための制度である。

 もちろん、この制度は、財産を守ることだけを目的としたものではなく、①自己決定の尊重、②残存能力の活用、③ノーマライゼーションの理念に基づいたものである。

 成年後見制度は、これまでの禁治産・準禁治産の制度を改めたもので、家庭裁判所が後見人などを選任する「法定後見制度」と、判断能力のあるうちに本人が任意後見人を指定し、公正証書で契約しておく「任意後見制度」からなっている。後見人は、財産管理やさまざまな契約を本人に代わって行う。