情報公開と第三者評価、オンブズマンの設置

 

 利用者がサービスを選択できるためには、どのような事業者がどのようなサービスを提供しているかについて正確な情報が得られる必要がある。事業者の運営母体、サービスの種類・内容・特徴、従業員の職種や人数、利用料などといったことが利用者が事業者を選択する指針となるが、それと併せてサービスの質についての情報も不可欠である。

 サービスの質の評価には自己評価も必要であるが、公平性、正確性のためには第三者評価が必須である。市町村や市民団体の中には介護サービス評価を行う動きが出てきている。これらの評価結果を公表することは利用者のサービス選択に役立つのみならず、質の低い事業者は淘汰され、全体としての質の向上に寄与する。また、利用者の苦情や要望を事業者に伝え、サービス向上を促す役割を担うオンブズマンの設置も重要であり、今後このようなオンブズマンとしてNPOなどの活躍も期待される(第10章第3節参照)。

 国民一人ひとりの自覚と責任

 介護保険制度には問題点もあるが、利点も多い。今や介護は社会全体で担っていかなければならないことは万人の認めるところであろう。そのひとつの方策として実施されることになった介護保険制度をより良いものにしていくことが、これから迎える超高齢社会を安心して生きられるために必要なことと思われる。そのためには私たち国民も応分の負担をする必要がある。その自覚とともに、「応分」の負担とは何かを改めて議論する必要があるのではないであろうか。納得できる負担であれば、国民としてその責任を果たすことは当然と言えよう。

(1) 2000年スタート時点で保険料月額の全国平均(基準額)は2,900円である。本人が住
 民税非課税の場合は基準額を支払い、生活保護の受給者や老齢福祉年金受給者は基準額
 の0.5倍を、世帯全員が住民税非課税の場合は0.75倍を支払い、逆に本人が住民税課税
 で合計所得金額250万円未満の場合は基準額の1.25倍を、本人が住民税課税で合計所得
 金額250万円以上の場合は1.5倍を支払うことになっている。
(2)第1号被保険者の保険料については、半年間は徴収を凍結し、その後の1年間は半額
 を徴収することにスタート直前になって見直しされた。
(3)実際には指定居宅介護支援事業者等に委託し、ケアマネジャーなどが行うことが多い。
(4)要介護認定基準時間は、実際の施設入所者について2日間にわたる、1分おきにどの
 ような介護が行われているかという調査に基づき、仮にその人が施設に入所したらどの
 くらいの介護の時間が必要か推計したもの。
(5)予防給付は要支援者を対象とした給付であり、要介護状態となることの予防のための
 サービスであるので。在宅サービスのみである。ここでは、介護給付についてのみ述べ
 るが、予防給付について在宅サービスに関しては一部を除いて同様である。
(6)在宅や施設サービス利用者に直接その「費用」が支払われるわけではなく、実際には
 サービスが提供される(「現物給付」という)のであるが、サービスにかかる費用が保
 険から支払われるという意味で、法律の条文では「サービス費の支給」となっている。
(7)2000年4月の制度発足時には、「身体介護」と「家事援助」、およびこの両者を併せた
 「複合型」の三種類のサービスがあったが、2003年4月の制度見直しでこの「複合型」
 は廃止された。この見直しでは単価が安いとの批判があった「家事援助」について、
 「生活援助」と名称が変更され、単価も上げられた。逆に「身体介護」については30分
 未満の介護については少し上げられたが、30分~1時間半未満については変更なし、1
 時間半以上については大幅な引き下げとなった。施設介護についても引き下げられた。