申し立て件数

3 申し立て件数

 

 権利をすべて奪う「禁治産制度」から、新しい「成年後見制度」になってから、申し立て件数は大幅に増加した。しかし、いまのところ、利用者は都市部の方に多く、また、後見人を家族以外の第三者に委任する人はまだ少ない。

 成年後見関係事件の申し立てが以前より大幅に増加したのは、高齢者や障害者への福祉の充実に対する社会的要請が高まっていることや、この制度の手続きが、これまでの禁治産制度等よりは利用しやすいものになったからである。

 また、公示方法が、従来の戸籍に記載され、官報に公告された禁治産・準禁治産制度と異なり、「成年後見登記」になり、本人のプライバシーに配慮した制度になったことも増加の一因であろう。

 新制度のポイントは、①家庭裁判所が後見人を選任するものと、本人の事前の任意契約による任意後見制度との2本立てである。②法定後見制度には、「補助」「保佐」「後見」の3類型がある。③任意後見制度には、任意後見人のほかに任意監督人がおかれ、監督人は、任意後見人を監督し、家庭裁判所に報告義務を負う。④戸籍記載に代わる成年後見登記制度が創設された。⑤手話通訳、筆談による公正証書遺言を認めた。⑥法人が後見人になることができ、複数の後見人を認めた。⑦配偶者がいる場合は必ず後見人になる制度を廃止したという点てある。

4 法定後見制度

 法定後見制度には、補助、保佐、後見の制度がある。

    老人ホームで暮らす77歳の男性は、痴呆の妻(75歳)の成年後見人になった。満期になった妻の簡易保険を受け取ろうと郵便局の窓口へ行ったところ、支払いを断られたからである。本人に代わって保険を受け取るには、委任状が必要であるが、妻は痴呆がすすみ、字も書けない状態になっていた。そこで、家庭裁判所成年後見制度の申し立てを行った。家庭裁判所での審査の結果、夫が「法的後見人」に認定され、保険金を受け取ることが出来た。                                    \

補 助

 補助は、新設の制度で、軽度の精神上の障害(痴呆、知的障害精神障害)で、判断能力が不十分な人を対象としている。補助の制度を利用するには、高齢者本人や配偶者または四親等内の親族が「補助開始の審判」を申し立てる。親族の申し立てには、自己決定権を尊重するという観点から本人の同意が必要である。家庭裁判所は補助開始の審判をして「補助人」を選出する。保護の内容および範囲は、当事者の申し立てによる選択に委ねられている。その範囲は、たとえば、預金の管理、重要な財産の処分、介護契約の代理などである。また、現在は補助の対象となっていない痴呆や障害の程度が比較的軽い人も、本人の申し立てか同意があれば、補助人をつけることができる。補助人は、複数でもよく、法人も補助人になれる。

 2)保 佐

 保佐は、精神上の障害により、判断能力が著しく不十分な人が対象で、これまでの準禁治産に代わる制度である。家庭裁判所が、保佐開始の審判をして「保佐人」を選任する。自己決定の尊重の観点から、保佐人への代理権の付与は、本人の申し立てまたは同意を要件としている。

 3)後 見

 後見は、常に精神上の障害で判断力を欠く状況にある人が対象で、以前の禁治産に代わる制度である。裁判所が、後見開始の審判をして「成年後見人」を選任する。成年後見人は、広範な取消権と代理権をもつ。

 後見人の仕事としては、財産管理のほか、契約などの法律行為(介護契約、医療契約、有料老人ホームの入所契約等)を代行したり、取り消したりする権限を広く認めているが、日用品の買い物などは本人の意思を尊重し、取消権はない。