Cause and result:英文を書く際のルール
英語を書く際に忘れてはならないのが,「Cause and result」という考え方である.ライティングでの日本語と英語の根本的なちがいの1つである.英語では,いつもCause and result (原因・理由と結果・効果・言いたいこと)の両方を述べなければならない.
ところが日本語では,この論理からはずれている文章が多い.日本語では,理由しか言わなくても相手がその先の効果・結果を察してくれるからである.以心伝心というわけである.
子供が学校から帰ってきて,お母さんにこう言う.
「ぼく,おなかがすいた」
文としての情報からだけでは,「現在,空腹である」という情報しか得られない.このばあい,お母さんが何もしなかったら,子供は怒りだしてしまうにちがいない.彼は「おなかがすいているから,おやつをちょうだい」と主張しているからである.一方英語ではどうか.
あなたがアメリカに行き,コーヒー・ショップに入ったとする.もし自分のところに水が来なければ,あなたはこう言うだろう.
l don't have a glass of water,
日本語だったら「お水がないんですが」というだけで十分である.ウェイトレスは水をもってくる.ところが,英語ではそうはいかない.
これは単に状況を述べているだけで,あなたの要求を提示していることにはならない.英語的論理では,
Please give me a glass of water, because l don't have one.
と言わなければならない.
日本語ではこちらの言おうとする部分を相手が察してくれるという性質があるので,英語でもこの論理で表現しようとする日本人が多い.
しかし英語では「原因と結果」あるいは「~だから,~である」式の文にしなければ,相手にわかってもらえない.英語のこの考えを仕事文にも応用すべきである.
技術文では,以下のような例が多く見られる.
この文章は,論理的で説得力があります.
この文では「論理的で説得力がある」と述べているが,なぜそういう結論が出てくるのか不明確である.?の部分の情報が欠如している.
この文章は,数式で証明されており,論理的で説得力があります.
この機器は,省エネに貢献できる.
この機器は,太陽エネルギーを動力源にしているので,省エネに貢献できる.
情報を加えることによって,原因十結果の文になる.文を書いたら,かならず,原因・理由と結果・効果の情報が入っていることを確認することである.
原因と結果の情報は言葉そのものにも反映される.つぎの文を見ていただきたい.
いたずら好きな男が,ゴリラのマスクを買った.
英文でいえば,S十V十〇のパターンである.この文からは,いたずら好きな男がゴリラのマスクをかぶって,なにか,悪さをしようとしているシーンを思い浮かべることができる.
つぎの文はどうだろう.目的語(O)がゴリラのマスクから“紙袋"に変わっただけである.
いたずら好きな男が,紙袋を買った.
なんの変哲もない文である.いくらいたずら好きな男でも,紙袋1枚では,なにもできるわけがない.そこでこの目的語に修飾語をつけてみる.
いたずら好きな男が,買い物用の紙袋を買った.
この修飾語では,いたずら好きな男はなんら手の打ちようもない.では,つぎはどうだろうか.
いたずら好きな男が,開けると笑い声が飛び出す紙袋を買った.
これで,納得できる文ができる.
このように,主語,目的語に入っている惰報が,その内容を伝えるのに十分であるかどうかをチェックするべきである.主語(S)と目的語(O)の情報の重さが平均しているかとうかを確認すべきである.書き手だけがわかっていて,読み手にとって不十分な文を提示していないだろうか.