一文一義の文で書く
①日曜日に父と庭石を動かした.
②これは,当社が開発したパソコン用CADシステムです.
①の例文は,ごくあたりまえの文ととらえた人がほとんどではないだろうか.
ところが,この文を機械翻訳システムで処理しようとすると,とんでもない結果になってしまう恐れがある.
「父と」の「と」を,コンピュータは, andと解釈してしまうのだ.すると,どういう結果になるか.
もう少し極端な例文を紹介する.
③日曜日に父とゴミを裏庭で燃やした.
この「と」を, andと訳してしまったら,たいへんな文になってしまう.リライトしてみる.
日曜日に父といっしょに,ゴミを裏庭で燃やした.これでも誤解を受ける.
日曜日に父に手伝ってもらい,ゴミを裏庭で燃やした.
やっと安心できる文になった.
書き手と読み手の視点のずれが主たる原因である.書き手が,読み手の予備知識の有無を考えずに,文章を書くと,こんな結果が生まれやすい.仕事文は,書き手のためにではなく,読み手のためにあるのだ,ということを意識すること,そして,あなたの書いた文章を,相手が,どの視点からみても,一義にとってもらえる文章を書くこ.とが大切である.
②の例も誤解を招きやすい.
当社で開発したパソコンがあり,それに使えるCADシステムが,これである.
と解釈されるばあいがあるからだ.
これは当社が開発したCADシステムであり,パソコンで使用することができる.
『土佐日記』の一文一義,対比の文を思い浮かべれば,かんたんに解決できる.一文のなかに,複数の情報を盛りこまないようにすべきである.
化学実験用の入門書からの引用である.
④ガラス管とガラス管の連結には,ゴム管を使う.ゴム管には,真空用の肉厚のものと普通のものとがある.普通用ゴム管は真空用のように気密性に富まない
下線の部分が問題である.まずは,かんかんな例で説明する.
⑤A社は,B社のように一流企業ではない.という文では,
・B社は一流企業だが,A社は一流ではない.
・A社,B社ともに一流企業ではない. `
・A社は一流企業だが,B社ほどではない.
と読み手は,3つの選択を余儀なくされる.
④を一文一義で書いてみる.
(1)真空用ゴム管は気密性に富んでいるが,普通用ゴム管の気密性は悪い.
(2)普通用ゴム管の気密性は悪く,真空用ゴム管の気密性も悪い.(3)普通用ゴム管はある程度の気密性に富んでいるが,真空用ゴム管の気密性ほどではない
形容詞(または形容詞句)が限定する名詞の範囲を確認することが肝心である.
一文には,1つのことだけを入れる一文一義,言い換えれば,一文一事の考えを駆使すれば,こういうまちがいは回避できる.