高齢者虐待の要因・実態・防止策

 

 介護を必要とする高齢者に対する虐待が増加している。高齢者の虐待が起こる要因として、①介護する側の過重な負担への不満、②要介護高齢者を抱えたやり場のない閉塞感によるストレス、③介護者と親族との財産絡みのトラブル、④同居家族との人間関係の不和、⑤介護者の失業、転職などがあげられる。

 そのなかでもっとも大きな要因は、介護疲れである。要介護者を抱える家族は、心身ともに重い負担を背負っている。介護が長期にわたる場合「介護疲れ」でノイローゼになったり、同居の家族との人間関係、ことに夫婦の関係が悪化していく場合も少なくない。

 とくに、老親が要介護状態になって、急に同居して世話をしなければならなくなったような場合は、双方の予想や期待が大きく食い違うため、看る側の負担感、介護のストレスなどでいじめや虐待が起こる原因にもなっている。

 虐待の実態

 高齢者への虐待には、①殴る、蹴るなどの「身体的虐待」、②心ない言葉をあびせる「心理的虐待」、③十分な食事、暖房、衣類、楽しみなどを与えない、おむつを換えないなどの「介護拒否」「日常の世話の放棄」、④「性的虐待」、⑤金銭を取り上げる「経済的虐待」などがある。

 そのほか、強制的に隔離したり、薬物を濫用したり、金銭や財産を取り上げることなどもある。また同居して面倒をみている子が、遺産相続を有利にすすめるため、別居している子どもを親に会わせないといったケ-スもある。

 虐待を受ける被虐待者は、女性が80%で、寝たきりが半数、準寝たきりが2割である。虐待者は妻、同居の息子の妻などに多い。

 虐待の内容としては、土地、建物の不動産の名義を勝手に書き換える、年金や預金を勝手に使う、現金を取り上げるといった「経済的虐待」が半数以上を占めていた。

 こうした虐待に対して、被虐待者は、「痴呆で虐待されていることがわからない|「訴えて介護者に見放されたら困る」「家を離れたくない」などの理由で「あきらめ」たり、「忘れ」たり、「虐待を隠す」などで、6割以上が虐待の事を訴えたり、助けを求めたりしていない。また虐待側で虐待の自覚があるのは10%に過ぎない(大阪老人虐待研究会調査)。

 虐待を防ぐには、高齢者の心理を理解するとともに、介護する者がすべてを背負い込むのではなく、さまざまな福祉サービスを利用して、介護者の精神的、肉体的ストレスを軽減したり、息抜きをし、重荷を軽くしていくことが必要である。