アナフラニールの効果について

 

 98年の国内売上No1の抗うつ薬はこの薬である。売上は薬価にもよるので一概に売上がいいから人気薬とは言えないし、99年のデプ口メール、ルボックスの登場によって日本の抗うつ薬市場は大変動することになると思われる。が、とりあえず98年の段階では国内売上-位だ。しかし一方二の薬、実はアメリカでは抗うつ薬としては認可されておらず、強迫神経症の薬として認可されているのである。

 トフラニールの発売後、ガイギー社ではより強い抗うつ薬の開発に取り組んでいた。そして生まれたのがアナフラニールである。化学構造からいうとトフラニールに塩素を加えたものである。

 ところが抗うつ薬としてはトフラニールに劣るデータしか得られず、世界】の市場であるアメリカでは認可されないという事態に陥ったのである。抗うつ薬としては失敗作だったのだ。

 ところが60年代末になって欧州の研究者からアナフラニールに強い抗不安作用があり、強迫神経症、恐怖症に有効であるとの報告が上がってきた。これらはのちのDSM分類でいえばパニックディスオーダーといわれる疾病に近い。パニックディスオーダーの出現率は2~3%といわれており、実は大変身近な疾病なのだが、当時は治りにくい病気とされ有効な薬がなかった。

 こうした研究の影響もあって、75年にまず英国において、アナフラニール抗うつ薬強迫神経症の治療薬として認可された。

 一方アメリカでは、80年に改訂されたDSM-Ⅲでパニックディスオーダーという精神疾患の概念が生まれ、81年にはパニックディスオーダーにターゲットを絞ったザナックス(日本名ソラナックス)が販売され好調な売れ行きを示した。

 そんな中、80年からほぼ10年間にわたって、世界中で口一もの研究が行なわれ、パニックディスオーダーに対するアナフラニールの有効性が着々と確かめられていった。この研究をもとに、製造元のチバガイギー社はアメリカFDAに異例の2回目の申請を出し、89年にパニックディスオーダーの治療薬として認可を受けたのである。繰り返しになるがこういった経緯で、アナフラニールはアメリカでは抗うつ薬としての認可は受けていない。

 抗うつ薬は基本的に脳内のモノアミン(神経伝達物質の総称)と呼ばれる物質を見かけ上補うかたちで作用する。このモノアミンのうち抗うつ薬が補うのは主にセロトニンノルアドレナリンの2種類である(ちなみにドーパミンを補うのがアンフェタミンメタンフェタミンといった覚醒剤である)。

 近頃話題のSSR1は、セロトニンに対して選択的に強く作用する薬なのだが、アナフラニールも選択性は比較的弱いがセロトニンに対して強く作用する薬であり、実は対セロトニン作用に限れば、プロザックより強い(とはいえ、作用の強さが単純に薬効として現れないのが抗うつ薬の難しさでもあるのだが)。

 とにかく、セロトニンは不安や恐怖に関連が深く、セロトニンに作用する抗うつ薬は、ハニックディスオーダーに対して有効である場合が多いのである。

 80年以降にアナフラニールのパニックディスオーダーに対する有効性が確かめられたことから、当時開発中たったプロザックルボックスといった同じセロトニン系の抗うつ薬についても、臨床段階においてパニックディスオーダーヘの適応が確認された。実際、ルボックスなどもアメリカではアナフラニールと同じく強迫神経症の薬として認可されているのである。

 とくにドグマチールを併用するようになってからは顕著に効果を実感。うつというと無気力のように思われがちだが私の場合は絶えず緊張状態にあるがゆえのうつ状態だったこともあり、抗不安作用の強いこの薬が効くのを実感できた。

薬ミシュラン』より