セントジョーンズワード、ヒデルギン

■セントジョーンズワード(St. John's Wort)

 米国ではうつ対策としてプロザック的に使用される。中身は西洋オトギリ草ハーブである。米国ではメラトニン同様健康補助食品扱いであるが、コンビニには売ってない。もっぱらサプリメントショップでビタミン剤の横に置いてある。草のまま売っている場合もあるが大抵はカプセル入りだ。

 さて西洋オトギリ草の成分には、弱いながらもMAO阻害作用がある。つまりMAO阻害薬と同じ作用があるのだ。軽度のうつ病に対しての有効率は6割程度というデータもあり、あくまで軽いうつ病に対する治療薬としては有効のようだ。なおMAO阻害剤はチーズ・赤ワイン等のチラミン含有食品と一緒に服用すると高血圧になって脳溢血を誘発する可能性が指摘されている。3環系抗うつ薬との併用も禁忌である。

 いままでいくつものハーブ系元気の出る薬が世に出てきたが、セントジョーンズワードは唯一生き残っている定番商品であろう。しかし気になるのは植物成分ということもあって気軽に用いられすぎていることだ。前述の併用禁忌なども考えると、大量服用は危険に思う。


■ヒデルギン 

 日本でも同じ名前で処方箋薬として販売されている。本来は脳梗塞後遺症、脳出血後遺症、脳動脈硬化症、頭部外傷後遺症などといった脳の血管障害に対して使う薬である。

 しかしどうもこの、脳機能改善薬(頭が良くなる薬)というものには本当に効くのか怪しいものが多い。ヒデルギンは今でも生き残っているが、98年には3つの脳機能改善薬が効かないということで承認取り消しになっている。そもそも頭が良くなるかどうかをデータ的に証明できるのかという問題はある。ネズミを使った実験では迷路をよく憶えるとかいう結果は出ているのだが……。

 もう1つ、脳の血行を良くすると頭が良くなるという説であるが、これも少し怪しいような気がする。もしヒデルギンのメーカーが主張するように血行を良くすることが頭を良くすることに直結するとしたら、タバコはどうなるのか? タバコには血管収縮作用があるので、タバコを吸うと逆に頭が悪くなることになるのだが……。

 なお日本での薬価は純正が1錠30円、ソロは12円である。医者から保険適用で出してもらえれば、海外から輸入するよりは安くつく。