要介護認定における問題点

1 要介護認定における問題点

 要介護認定のための一次判定の基準は、施設入所者の調査をもとに作成されているため、在宅の痴呆の人の介護の困難さなどは反映されていない。そのため、痴呆高齢者の要介護度が低く判定される傾向かおる。たとえば「まだら痴呆」は1回の訪問で痴呆を見抜くのは困難である。同様に、障害の重さではなく、介護にかかる時間が判断の基準となるため、たとえば「低肺」で寝たきりであっても、「要介護3」にしか判定されない(『毎日新聞』(東京版)2000年3月30日)ということも起こる。基本的に、判定の基礎資料となる調査では、調査員の力量に左右されるところが大きいことが問題点として指摘されている。

2 保険料未納者、無保険者の問題

 介護保険法には、市町村が条例で保険料の減免ができると規定されており、現実に住民税非課税世帯、生活保護受給世帯などに対する減免措置がとられている。しかし、免除基準に該当せず、かといって保険料は払えないボーダー層の人たちが出ることは避けられない。介護保険法の中には保険料滞納の場合、保険給付の全部または一部差し止めなどの厳しい罰則(ペナルティ)が定められている(法67条)。所得が低く、保険料未納となった人が介護が必要な状態となり介護サービスを利用した場合、保険給付の全部または一部を差し止められるため、その費用を自己負担しなければならない。保険料も払えない人がサービス利用費を払えるわけがなく、結局、所得の低い人は介護サービスを利用できないという事態も発生する。

3 サービスの量と質、および地域間格差の問題

 保険者である市町村の基盤整備が不十分なため、サービス量が大幅に不足する地域がある。とくに特養は、絶対数の不足に加え、在宅介護の方が出費もかさむことから(在宅では利用料に加え生活費もかかるが、施設では月5万円ほどで生活できる)、やむなく施設入所を望む人が増えたこともあり、介護保険施行後1年で待機者が急増した地域も少なくない。

 また、サービスの質についても明確な基準がなく、そのための情報も不十分である。このような状況では、「在宅重視」「利用者が選ぶサービス」という介護保険の理念とはうらはらに、(利用者を選ぶ)選択権をもっているのは事業者であると言わざるを得ない。

4 利用料負担の問題

 保険給付を受ければ、原則として1割の利用料を支払わなければならないが、これが低所得者にとってはかなりな負担となる。とくに所得が低く、これまで措置で手厚いサービスを低額の利用料で受けてきた人たちにとっては、同様なサービスを受けるためには支払わねばならない利用料が高額すぎ、結局、サービスの利用を減らさざるを得ない。要介護5の判定を受け、介護保険で約36万円分使える枠があっても、使っているのは13万5千円分だけというような例も珍しくない(『朝日新聞』(東京版) 2001年7月5日)。平均して支給限度額の4割強程度しか利用されておらず、介護保険の施行後、かえって受けられるサービスが減り、負担も増えたという嘆きの声も少なくない。

 5 ケアマネジャーに関する問題

 ケアマネジャーは、事業者と利用者との間の調整を図り、利用者のニーズと希望に添って、利用者の自立を最大限に援助するサービスを受けられるようなケアプランを作成し、それを実行させることを主要な任務とする。しかし、この本来の仕事が充分に果たせない状況に置かれているケアマネジャーが多い。その原因のひとつは報酬が少ないことにある。

 ケアマネジャーは事業所に所属しているが、ケアプラン作成の1人あたりの報酬は、月額8,500円である(2003年4月に改定)。厚生労働省が標準とする50人分をもっても最大40万円ほどにしかならず、経費を差し引けば人件費をまかなうことさえむずかしい。このため、多くの人は事業所での立場が弱く、利用者の希望より事業者の意向に沿ったケアプランを作らざるを得ない状況に置かれ(他の事業者のサービスは入れられない、家事援助より報酬の多い身体介護を多く使ったプランの作成を強いられる等列(「朝日新聞」(東京版)2000年12月31日)、利用者と事業者との板ばさみになり、調整役をひとりで強いられているというのが多くのケアマネジャーの実態である。また、採算を取るために多くのケアプラン作成を引き受け、利用者と充分に話し合う時間もとれず、ケアプラン作成にともなう膨大な事務量に忙殺されているケアマネジャーも少なくない(『朝日新聞』同上)。