デクサトリムの評価

 多少ドラッグに通じている人なら、成分名フェニルプロパノラミンというのを聞いただけで、ピンとくるだろう。元々は鼻炎の薬なのだが、カフェインやエフェドリンとのカクテル用ドラッグとしても有名だ。化学構造式は、日本輸入禁止の精神賦活剤こアクストロアンフェタミンのそれを左右ひっくり返したものだ。

 薬理的には、a1受容体を作動させノルアドレナリンの放出を促すとされている。つまり、覚醒感を催す薬なのである。覚醒剤で食欲がなくなるのと基本的には同じ話である。「カフェインは入ってません!」というキャッチコピーをうたっているが、これも笑える。なぜなら、カフェインやエフェドリン以上にアッパーな薬だからだ。

 アメリカでは処方箋なしで薬局で買えるダイエット薬としてブレイクしているようだ。日本の代行業者を通さずに直接買った場合、値段は40錠で旧ドル程度ですむ。この単価の安さにもかかわらず、販売元によると年間60億円以上の売り上げがあるという。 注意書きには、1日1錠を超える量は使用しないこと、3ヵ月以上の連用はやめることとあるが、そ
んなことを言われてもすでにアメリカでは「デクサトリム・ジャンキー」という言葉まで登場している模様。1錠にフェニルプロパノラミンが75mg入っており、午前中に1錠服用するだけで10時間以上の食欲抑制効果が得られるという。副作用は、不眠に頭痛とあり、覚醒系の薬なら当然の副作用だ。しかし効能書きには3ヵ月以内で小食になる習慣をつける薬と書いてある。こんな覚醒系の薬をダイエット薬として売るとは……唖然。

 ダイエット薬としてではなくて別の意味でクセになりそうな薬だ。

薬ミシュラン』より