バソマックスを飲んでAVにチャレンジ (後編)

 


 人妻さんがシャワーを浴びている間に、僕は祈るような気持ちでバソマックスを飮んだ。白い三角形の粒で、ずいぶん粉っぽい。舌にのせるとホロリとくずれてしまいそうだ。かなり苦味もあるようだが一気に水で流し込んでしまえば気にならない。説明書に「空腹時が効果的」と書いてあったから、ちゃんと食事も抜いておいた。

 その後、僕もシャワーを浴びたり、インタビューを撮ったりしてから、いよいよカラミの撮影となった。

 「エッチは久しぶり」

という人妻さんは、すっかりやる気十分。さすがに犬は邪魔なので、隣の部屋に追いやってふすまを閉めてある。

 キスをして、全身を愛撫する。人妻さんの反応はよく、すぐに声が漏れてきた。すると、その声に反応するように「ワンワンワン」と犬が吠える。御主人様のピンチだと思ったのか、それともオレにもやらせろという意思表示なのか。人妻さんが声をあげるたびに、犬は吠えたり、ふすまにツメを立ててガリガリ音をさせている。うわあ、こりゃかなわない。まだ効かないか? バソマックス。

 しかし、クスリ特有の股間から沸きあがるような感覚は、まだ訪れない。ただバイアグラを飲んだ時と同じように胸のドキドキ感はあるので、間もなくだろう。

 ひととおりテクを駆使して人妻さんを責める。「あんあん」と人妻さんが声を漏らす度に、「ワンワンワン」と犬が吠え返す。飲んでから30分はたっているはずなのに、まだ効果は現れてこない。この前の性感ヘルスでバイアグラを試した時は、エッチな話をしていただけで完全勃起したのに、今日のチンポはまだフニャフニャのままだ。どうしたバソマックス。

 ここで攻守交代で人妻さんにフェラしてもらう。さすがに直接的な刺激には反応して、すぐに勃起した。だが、普通の勃ちだ。バイアグラやミューズを使った時の、中に太い芯が入ったようなガチガチの勃起感がない。まだ効果が「来て」いないのだ。

 しかし、あまりのんびりも構えていられない。そのまま挿入に入る。人妻さんの脚を大きく広げさせて剛毛に縁取られた部分へとテンポを沈めていく。そしてゆっくりとピストン運動を開始して……。

 恐れてたことが起きた。チンポが急速に勢いを失っていくのだ。中折れだ。まだ効かないのか、バソマックスー 遅いぞ一

 その後もう一度フェラしてもらったりして、再度挿入に挑戦したのだが、やはり中折れに終わり、結局そのまま撮影は終わった。普通のAV現場だと、こんな時は疑似本番でごまかすのだが、ドキュメンタリー性を重んじるバクシーシ山下は、ダメな時はダメなままで撮影してしまうのだ。そんなわけで今回もまた僕は「クスリの力を借りながらも役立たずの男優」としてビデオに記録されてしまうことになった。とほほ。

 それにしても、まったく音沙汰なしとはどうしたことだろうバソマックス。やはりキツい相手の上、犬が真横で吠えているという異様なシチュエーションで、こちらがまったく興奮できなかったというのが原因だろうか。あくまでも構神的に興奮しているのを、肉体的な勃起現象へつなげるのが目的のクスリなのだろうし。

 バソマックス、バクシーシ山下組に破れるといった結果となってしまったが、これで効き目を判断するのはアンフェアというもの。いちおう別のシチュエーション(都合により詳細は書けないが)でもバソマックスを試してみた。こちらでは見事に効果を発揮したものの、やはりバイアグラの時ほどの「すごい勃起感」は得られなかった。やや勃ちがいいかなという程度。

 バイアグラがダメでもバソマックスが効くという人もいるようなので、体質的な個人差があるのかもしれない。

 バイアグラにしてもバソマックスにしてもミューズにしても、あくまでも血行を促して勃起させる薬であり、精力剤とは違う。だからいくら勃ったとしても、出せば疲れる。構液も段々薄くなるし、発射に時間がかかるようになる。勃起することが嬉しくて頑張りすぎると、あとで体調を崩すことにもなりかねないので注意が必要だ。

 ま、いざという時のためにサイフに忍ばせておくというのは、精神的な支えになるとは思う。ダメならばコレに頼ればいいやと思えるだけで、気分的にラクになれるものなのだ、男って。

 というわけで今も、僕のサイフの中にはバイアグラが2粒、こっそりと眠っている。

薬ミシュラン』より