個人の立場で適量を輸入するなら問題ナシ

 


 さらに、いかに自分で使用するためであっても、無制限に輸入できるわけではありません。薬事法第80条により毒薬、劇薬及び要指示医薬品は1ヵ月分以内とされており、ほぼすべての向精神薬もこの分量の範囲内でということになっています(抗生物質やビタミン剤といった悪用出来そうにない薬は自分の使用量である2ヵ月分か目安とされている)。

 バイアグラの場合はどうでしょうか? 98年度に成田で没収されたバイアグラは4万錠以上とされています。バイアグラは「麻薬及び向構神薬取締法」ではなく「薬事法」によってですが、こちらも1ヵ月分を目安とされています。ですから、没収された人は1ヵ月分=30錠程度にしておけばよかったのです。あるいは小分けにして自分の住所宛てに送ればよかったのでしょう。一気に何百錠も持ち込めば商売用と見なされて当然です。

 ただし付け加えておくと、この1ヵ月分という基準にも曖昧な部分かあります。たとえば発毛剤ロゲインなどは平気で3本セット=約3ヵ月分か販売され輸入されていますが、摘発された話は聞きません。

 ほとんどは、消費者として代行業者を利用し、輸入を「代行」してもらうという立場の人でしょう。この消費者としての立場で、しかも適当な分量を輸入している限りは、法にふれることは未来永劫まずありえません。たとえば警察に所持品検査を受けてプロザックなどの特に輸入が禁じられていない向構神薬を発見された場合でも、所持しているだけでは何ら罰則規定はありません。自分の治療目的で所持する限り大丈夫です。ただし友人にお土産として持っていくなどと言うと譲渡目的での所持ということになり法にふれますので要注意です。薬は輸入した本人が使用しましょう。

 さて、輸入代行業者の側では、当局とのイタチごっこが続いているようです。たとえば日本国内にサーバーがある日本語ページで、「プロザック」などと明確に表記することは「広告行為」にあたるというかなり強引な解釈によって、当局に摘発された業者も出てしまっています。これ以後代行業者の側では、サーバーをアメリカなどの国外に置いたり、医薬品名を「プロ●ツク」などと伏せ字にして明確に記述しなかったりという方策がとられています。

 ではたとえば摘発された業者からたまたま薬を買っていたらどうなるか? というと、この場合でも特に罰則規定はありません。

 しかし一方では、前述の通り、医薬品の輸入を規制する法律の根底に日本の医薬品業界の保護という考えがあるという事情があります。つまり医師・薬剤師の商売を守る為には、法律などいかようにも拡大解釈される可能性もあるのです。ですからたとえばの話、何回も注文して代行業者と馴染みになったからといって、大量の薬を送ってくれと依頼したりといった無茶なことは避けるべきです。バレる可能性がゼロに等しいとしても、自分で墓穴を掘るようなことはやめましょう。
薬ミシュラン』より