地域福祉権利擁護事業

 

 判断力や身体の衰えで、日常的な金銭管理が困難な高齢者が増えている。こうしたひとり暮らしの高齢者をサポートするのが「地域福祉権利擁護事業」である。

 成年後見制度は、判断力の不十分な人の財産管理および身上監護に関する契約などの法律行為を援助するためのものだが、この「地域福祉権利擁護事業」は、後見人をつけるほどではないが判断が不十分な人が対象である。

 この事業は、こうした人たちが可能な限り、地域で自立した生活を継続していくために、できるだけ簡便に。福祉サービスの利用手続きを援助したり代行したり、またそれに付随した日常的な金銭管理を行うものである。

 したがって、本人に契約締結に必要な判断能力がない場合や、利用契約締結後、本人の判断能力の程度や援助の内容によっては、成年後見制度につなげていく必要がある。

 つまり、成年後見制度と地域福祉権利擁護事業が相互に補完して機能を果たすことによって、判断力の不十分な人も、地域で安心して生活することができることになる。

 この事業は、全国の都道府県の社会福祉協議会によって、1999 (平成11)年10月から始められた。銀行に振り込まれた年金をおろしたり、通院の際に付き添って家賃や医療費の支払いをしたり、介護保険で受けているサービスの内容を変えてもらうなども行われている。現在利用の大半は、痴呆症のあるひとり暮らし高齢者である。この事業は、あまり普及しておらず、ニーズはあるが、いまのところ、利用者はさほど多くはない。それは、かなりの利用料(1回当たり1,500円から2,000円程度)が必要で、契約締結が困難な人を支援する制度で
ありながら本人の申請と契約開始を前提としているからである。

 この地域福祉権利擁護事業では、1999年10月の開始から2001年3月末までの1年半で、延べ5万5,370件の相談援助活動と2,433人の契約および準備によるサービスが提供されている。