社会福祉の動向と福祉従事者

 

 1 福祉従事者の急増

 近年、社会福祉に従事する者の数は、約118万人にものぼる。他の職種と比較すると、病院や診療所で働く職員数が約240万人、教員が約130万人であることから、福祉分野は第3のヒューマンサービスというまでに成長した。最近では、社会福祉系の大学や短大、専門学校が急増し、学生だけではなく子育てを終えた家庭の主婦や、退職し第2の人生を歩もうとしている者、また現に仕事をもっているサラリーマンやOLにまで、福祉の仕事への興味関心が広まっている。さらに高校では、1994年度から文部省(当時)の指導によって、家庭科や職業教育の授業の一貫として「家庭看護・福祉コース」を設けることができるようになり、高校卒業時に介護福祉士の国家資格とホームヘルパー1級の資格をもつ高校生も増えつつある(図1参照)。

 なぜ、これほどまでに福祉の仕事が魅力的に映るのだろうか。

 理由のひとつとしては、わが国における人口の高齢化、なかでも後期高齢者といわれる75歳以上の者が今後急激に増加するなど、痴呆や寝たきりといった高齢者介護の問題が、身近に感じられるようになったことがあげられるだろう。現在、寝たきり高齢者の数は約120万人であり、虚弱な高齢者まで入れると、2025年には約500万人以上が誰かの世話を必要とする高齢者になる。また、バブル経済の崩壊によって日本経済が低迷化し、企業の倒産やリストラによる失業などで、安定性があり人間相手でやりがいのある仕事として、福祉分野の職業を志望することも考えられる。さらに、阪神大震災や各地で起こる天変地異に対して、ボランティア活動が注目されたことも考えられる。

 2 福祉マンパワーの必要性

 また、以上のような理由だけではなく、高齢者福祉をめぐる政策によって、福祉マンパワーの必要性が高まったことも大きな要素である。たとえば「社会福祉士及び介護福祉士法」(1987年)の制定により、社会福祉にかかわる国家資格として、相談援助業務を行う社会福祉士と、介護援助を行う介護福祉士が誕生した。また、ゴールドプランや新ゴールドプランによって、福祉従事者の量的な充実が大きな目標とされた。

 一方、福祉従事者の問題では、その量ばかりではなく、質についても重要な視点となってくる。社会福祉基礎構造改革のなかでも「人材養成・確保」という項目を設け、「福祉サービスに必要な専門的な知識や技術の取得だけではなく、権利擁護に関する高い意識を持ち、豊かな感性を備えて人の心を理解し、意思疎通をうまく行い、相手から信頼される人の育成を目標にする必要」性について触れられている。そして、社会福祉専門職の養成については、「保健・医療との連携の必要性、介護支援サービスの実施等に対応して、教育課程の見直しを行う必要」があるとして、実習教育や研究の充実を強調している。

 以下に、福祉サービスを提供する担い手として、在宅ケアを支える人や、施設ケアを支える人、さらに医療を支える人の“資格と役割”について説明したい。