バリアフリーデザインの考え方

 

 私たち居住者は裸で環境にさらされているわけではない。衣服をまとい、住宅によって保護された環境に包まれている。住宅は、コントロールされた空間と道具とエネルギーによって構成された身近な環境であり、その外側に、自然環境と都市や地域といった人工的環境、社会的環境がある。居住者の身体機能は一人ひとり皆異なっているから、本来、空間も道具もエネルギーも、その身体機能に合わせてコントロールされなければならない。そのコントロールが適切でないところにバリアが生じる。不適切なコントロールが度を過ごせばADL能力は低下し、逆に適切にコントロールされれば向上する(図4参照)。

 そういったことを念頭におきながら、バリアフリー住宅のデザインのポイントを以下に整理しておこう。

 ① 段差の解消一つまずきのもとをなくすためと、車いすの走行を妨げないため。ただし車いす使用の場合、車いすの座席の高さの段差はかえって移乗しやすいということもある。

 ② 滑りにくい床仕上材の選択。

 ③ 手すりの取り付け一必要とする人の身体寸法に合わせて設置する。将来設置できるように下地を整えておくことも大切である。

 ④ 広さの確保一車いすのためと、介護者のための二通りの観点から。

 ⑤ 適切な家具・建具・器具の選択一形式・形状の選択により、身体機能はカバーされる。

 ⑥ 十分な明るさの確保と色彩計画。

 ⑦ 室内気候の調整一局所寒地をなくし、身体機能によっては冷房や通風の配慮。

 ⑧ 緊急避難に対する配慮一避難路の確保や緊急通報装置など。

 ⑨ 介助機器の活用一段差解消機、斜行機、ホームエレベーター、リフターなど。

 ⑩ 記憶の連続一改築や改装により、過去の記憶が断たれ、痴呆を誘発することのないように配慮する。

 以上を地域の施設や環境に当てはめるとどうなるか考えてみよう。なお、バリアフリー住宅はどうしてもコストがかさむため、いくつかの優遇措置が用意されている。また、一定額の範囲内のバリアフリー化は介護保険の対象にもなる。