公的年金制度の確定給付型年金

 

 年金制度とは、老齢・退職、廃疾、死亡などによって、所得がなくなったり、所得が著しく低下したとき、一定の金額を長期的に支給する所得保障である。そして、社会保障制度のなかで医療とならぶ二本柱のひとつとなっている。

 年金制度には、国が法律に基づいて行う公的年金と、民間が任意に行う私的年金がある。さらに、私的年金には、企業が従業員を対象に運営する企業年金と、自営業者が任意に加入する「国民年金基金」、個人が任意加入する生命保険会社などの個人年金・財形年金がある。

 公的年金は、20歳以上の全国民が加入する国民(基礎)年金(1階部分)と、それに上乗せする形で会社員などの雇用者が加入する厚生年金や、公務員らが加入する共済年金(2階部分)がある。3階部分が、私的年金厚生年金基金、適格退職年金、個人年金など)で構成されている。

 公的年金には、老後保障の「老齢年金」だけでなく、病気やけがにより障害を負ったときに支給される「障害年金」、被保険者が死亡したときに遺族に支給される「遺族年金」が含まれている(表1参照)。原則として、公的年金は「一人一年金」である。したがって、複数の年金の受給権を取得した場合には、そのいずれかひとつ(通常は、もっとも額の高いもの)を選択しなければならない。

 公的年金制度は、社会保険方式をとっており、厚生年金や共済年金の保険料は労使折半の負担を原則としている。国民年金の財源は、被保険者の保険料と国庫負担(一般税収)である。

 ところで、公的年金は、将来の年金給付額が先に決まっている、いわゆる「確定給付型年金」である。そのため、拠出した年金保険料の積立金の運用が、うまくいかなくても、給付額への影響はない。また、年金の給付額は、毎年の物価上昇分に応じて改定され(物価スライド)、実質的な価値が維持されている。

 公的年金は、現役世代(生産年齢人口)の負担する保険料が年金受給世代(高齢者人口)の年金になるという「世代間扶養」の仕組みをとっている。人口の
 受けられる年金の種類

老齢基礎年金

25年以上の保険料納付期間(免除を含む)があるとき、65歳以上から支給。 60歳を過ぎていれば繰り上げ請求もできる。

障害基礎年金

病気やケガなどで心身に重い障害が残ったとき(20歳以前に障害のあった者も含む)支給。

遺族基礎年金

夫が死亡したとき、18歳未満の子がある妻または子に支給。妻の死亡の場合は、認められていない。

寡婦年金

25年以上の納付期間(免除期間を含む)があり、婚姻期間が10年以上ある夫が死亡したときに妻に60歳から支給。ただし、1、2を受給している場合は支給されない。

老齢福祉年金

明治44年4月1日以前に生まれたものに支給。所得制限あり。

死亡一時金

保険料を3年以上納めた者が年金を受けずに死亡したときに納付期間に応じて支給。

付加年金

定額の保険料に付加保険料を上乗せして納めると、1か月当たりで計算された額が老齢基礎年金に加算される。高齢化が予想以上にすすみ、「年金財政の悪化」と「給付・負担の公平性」の問題をかかえ、2001年10月、受給権の確保などの措置として、「確定拠出年金法」が施行された。これは、公的年金に上乗せされる年金制度の、新たな選択肢といわれている。