高齢者医療制度の課題

 

 日本における死亡数、患者数、医療費に深くかかわっているのが生活習慣病(がん、脳卒中、心臓病など)で、高齢になるにつれて増加する。

 生活習慣病という用語は、「生活習慣を改善することにより、疾病の発症や進行が予防できる」という認識により、1996 {平成8)年導入されたものである。これにより、健康的な生活習慣の確立こそ、疾病そのものを「予防」することになるという考え方に基づいている。

 そこで、「健康増進・発病予防」(健康的な生活習慣の確立)を一次予防、「早期発見、早期治療」(定期的な健康診査)を二次予防、「機能維持・回復」(リハビリテーション)を三次予防としている。一次予防の重視によって、医療費の抑制なども期待されている。

 また、高齢者医療費の増加の一因とされる「社会的入院」や「病院のサロン化」に対しては、公的介護保険の導入や医療機関の窓口負担の増加などを行っている。

 ところで、長野県は「低医療費で高い平均寿命」を可能にしている数少ない自治体である。就業率の高さ、保健活動の充実、在宅医療の普及、食生活、自然条件などがかかわっているとされる。

 長野県での保健活動は、現在国が推進している「予防」強化施策をすでに実施しているばかりか、「開業医は往診が当たり前」の医師が多く、「高齢者のほとんどがかかりつけの医師を持っている」といった状態で、在宅医療が盛んな状況がうかがわれる。

 プライマリ・ケア医(ホームドクター、かかりつけ医、家庭医ともいう)制度については、以前から論議されているが、ホームドクターなどに制約されず、「だれでも、どこでも」アクセスが自由な現行の医療制度にも利点があり、一気にプライマリ・ケア医の創設は困難と思われる。

 とはいえ、介護保険の認定を受けるために、かかりつけ医(主治医)の「意見書」を必要とすることもあり、改めて医師の重要性が確認された。これによって、地域医療の発展につながることが期待される。

 2004年は、5年に1度の見直しの年にあたる。厚生労働省は2003年11月17日、議論のたたき台となる、2004年の年金改革案を発表したOその内容は、現役世代の負担を減らすため保険料に上限を設ける一方、年金の給付を下げていこうというものである。