高齢者福祉施策への対応

 

 いま、多くの国々が、少子・高齢社会という共通した悩みをもっている。とくに、平均寿命が長くなったこと、家族形態が大きく変化したことなどにより、高齢者の介護は、従来の高齢者福祉施策では対応できない状況となっている。

 長寿は、めでたいことだった。しかし長寿は、同時に老後の生活に対する不安ももたらしている。そのなかで一番の不安は、「自分や配偶者の身体が虚弱になり、病気がちになること」(49.4%)で、「自分や配偶者が寝たきりや痴呆症老人になり、介護が必要になったときのこと」(49.2%)が、ほぼ同じ割合で続いている(総理府公報室「高齢者の生活イメージに関する世論調査」1993年9月調査)。

 また、家族介護のために離職した人の数は、年間14万3,500人である(総務庁「就業構造基本調査」2002年)。そのうち、約2割に相当する2万7,100人が男性であることから、高齢者の介護は、男女がともに取り組む課題となっている。さらに、家族だけで介護を担うことができない状況を「介護の社会化」でどれだけ解決できるのだろうか。介護保険制度、公的な介護サービス、民間介護サービス、NPO、ボランティアなどが、家族の介護とのかかわりでどのように活用でき、また、連携できるのだろうか。

 諸外国も、同様の悩みをもち、かつ、1980年代以降の国際的な経済活動の停滞に直面しながら、介護を中心とした「高齢者福祉施策」への対応ぱ異なっている。大雑把に分ければ、北欧・オセアニアのようにほとんどが公費負担の国、ドイツのように社会保険を中心とした国、アメリカのように自己責任を基調とするため大部分が私費負担の国などである。また、フランスのように高齢者をプラン、2001年。各国データなどを参照して作成。障害者と同じ「要介護者」として社会保険で保障していたのを、財源を租税とする介護給付制度や公的サービスの充実によって保障する福祉施策へと移行している国もある。さらに、中華人民共和国のように家族介護を中心としつつ、行政機関や地域における在宅サービスの連携システムづくりを高齢者福祉施設の拡充とともに進めている国もある。