カタカナ語表記のメリットとデメリット 

 サイデンステッカーの主張は,たしかに,耳を傾ける価値のある説である.しかし,仕事文では,以下に紹介するカタカナがもつ問題を重視すべきであると思う.正確に,わかりやすい文で情報を伝えることが仕事文の第一条件である.

 サイデンステッカーは,「誰か権威者が干渉すべきではない」と述べているが,こと仕事文にかんしては,企業または業界,さもなければ,権威ある団体などが表記を決めていかないと,他面での混乱の原因になる.

 その1つが,データベース検索の際のキーワードである.たとえば,コンピュータの意味を調べたいとき,コンピュータ,Jンピューター,電子計算機などいくつかのキーワードが存在する.

 また,カタカナ語では,
 ・フロッピー/フロッピイ
 ・カルシューム/カルシウム
 ・シェークスピア/シェイクスピア

など表記上の問題点も多い.

 絶対的に漢字表記のできない言葉は今後ますます増えていくだろう.だからこそ,なんでもかんでもカタカナにしてしまう傾向には歯止めをかける必要がある.

 そして,カタカナ語には,以下に述べるような問題も山積する.

 ①読み手が理解できない
 ②意味上のずれが生じやすい
 ③表記上の問題点が多い

 カタカナ語が有用なケース

 もっとも,業務では,意識的にカタカナを使うときもある.使っていいのは,つぎのばあいである.

 ①マニアを主体とした製品のマニュア(たとえば,オーディオ機器)
 ②読み手が限定されていて,カタカナ語のほうが理解されやすい製品
 ③カタカナ語でしか表現できない言葉(たとえば,プログラム,ソフトウェア)

 こういうケースでは,カタカナ語の使用が許される.

 カタカナで表現したほうがいいばあいもある.カタカナでしか表現できない言葉もある.たとえば,ハードウエア,ソフトウェアなどがそうであり,最近新聞をにぎわしているサイバースペース(コンピュータがつくりだす仮想空間のこと),インターネット,イントラネットなども漢字表記は不可能に近い.そして,ごく最近では,インタースペースという新語も生まれている.