高齢者のための保健福祉施設

 

1)老人福祉施設

老人福祉法は、「老人福祉施設」として7種類の施設を規定している。

(1)種類と目的

① 老人デイサービスセンター一身体上または精神上の障害があるために日常生活を営むのに支障がある65歳以上の者を通わせ、入浴、食事の提供、機能訓練、介護の方法の指導、その他の便宜を供与する。高齢者生活福祉センターは、過疎地などの高齢者向け複合施設で、小規模ながら介護支援、安心できる住まい、地域住民との交流の機能を総合的に備えているが、デイサービスセンターの範疇に入れられている。

 ② 老人短期入所施設一家族(養護者)の疾病その他の理由により、居宅において介護を受けることが一時的に困難になった65歳以上の者を短期間入所させて、食事・入浴などの日常生活上の世話(養護)を行う。

 ③ 養護老人ホームー心身機能の減退などのために日常生活に支障があるか、住居に困っている65歳以上の低所得者を入所させて、養護を行う。

 ④ 特別養護老人ホーム一身体または精神に著しい障害があるため常時の介護を必要とする者であって、居宅で介護を受けることが困難な65歳以上の者(介護保険の介護福祉施設サービスを受ける者を含む)を入所させて養護を行う。

 ⑤ 軽費老人ホームー60歳以上で、家庭環境・住宅事情等の理由により自宅での生活が困難な低所得の高齢者を、低額な料金で利用させる。食事サービスつきのA型と、自炊を原則とするB型がある。

 介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)は、食事・入浴の準備、緊急時の対応を行うほか、車いすを利用しやすくするなど、高齢者に配慮した構造・設備になっており、介護を要する状態になった場合には、訪問介護ホームヘルプサービス)などを利用して、できるだけ自立した生活が送れるように工夫され、住まいとしての機能を重視している。

 ⑥ 老人福祉センター一地域の高齢者に対して各種の相談に応じるとともに、健康の増進、教養の向上とレクリエーションのための便宜を供与する。

 ⑦ 老人介護支援センター一在宅介護に関する情報の提供、総合的な相談を行い、ニーズに応じた保健・福祉サービスが円滑に受けられるよう、市町村等との連絡調整を行う。厚生労働省の実施要綱では「在宅介護支援センター」という名称が使用されている。

 (2)設置と運営

 老人福祉施設を市町村が設置するときは、事前に都道府県知事に届出が必要である。また、社会福祉法人特別養護老人ホーム養護老人ホームを設置するときは都道府県知事(または指定都市の市長)の認可を、その他の施設の設置は事前の届出が必要である。

 社会福祉法人以外による民間施設については、特別養護老人ホーム養護老人ホームは設置できないが、軽費老人ホーム都道府県知事等の許可を得て、その他の施設は届出によって設置することが認められている。

 休止・廃止の場合も同様な手続きが必要である。

 特別養護老人ホーム養護老人ホームについては、厚生労働大臣によって、施設規模・構造設備一職員・管理・処遇などの最低基準が決められている。これを満たしていないと認可されないし、認可後であれば改善命令などが出される。

 2)その他の施設

 (1)老人憩の家

 地域の高齢者に対して、無料・低料金で、教養の向上・レクリエーションなどのための場所を提供して、高齢者の心身の健康を図る。小型の老人福祉センターといったもので、老人クラブの拠点になっている場合が多い。

 (2)老人休養ホーム

 景勝地・温泉地などに設置された宿泊利用施設で、高齢者の保健休養や、安らぎと憩いの場として、国民宿舎よりさらに安い料金で利用できる。

 (3)有料老人ホーム

 常時10人以上の高齢者を入所させ、食事の提供その他日常生活上必要な便宜を提供することを目的とする施設であって、老人福祉施設でないものである(老人福祉法29条)。設置に当たっては、都道府県知事に一定の事項を届け出なければならない。都道府県知事は、必要と認めたときは、報告を求めたり調査を行うことができ、入所者の保護のために改善命令を出すこともできることになっている。

 介護保険施設

 介護保険法は、次の3種の施設を介護保険施設と規定している(7条10号)。

 ①(指定)介護老人福祉施設  老人福祉法に基づく特別養護老人ホーム

 ② 介護老人保健施設 介護保険法に基づく、病院と老人ホームの中間的な施設で、入院を必要としないが、リハビリテーションや看護・介護を必要とする要介護高齢者に対して、医療サービスと生活サービスを合わせて提供する。

③(指定)介護療養型医療施設  医療法に基づく病院・診療所で、長期療養にふさわしい療養環境を提供する病床群。