遺伝子変異の種類と遺伝子診断

 

 一般に遺伝性疾患の原因となる遺伝子の変異には1つの塩基が変化する点突然変異(point mutation)と,ある遺伝子の領域がごっそりと欠失(deletion),挿入(insertion),増幅(amplification)などにより変化する変異に大別される.点突然変異にはコードするタンパク質のアミノ酸を変化させるミスセンス(missense)変異,終止コドンに変化してタンパク質への翻訳を途中で停止させるナンセンス(nonsense)変異,翻訳の読み枠を変えるフレームシフト(frameshift)変異がある.ASAは変異型DNAにはハイブリダイスできないオリゴヌクレオチドをプライマーとして用い,変異DNAはPCRにより増幅できない性質を利用して両者を区別する方法である. ASOにおいては同様なオリゴヌクレオチドを直接プローブとして用い,サザンブロットによって区別する. CCMでは変異によって二本鎖DNAを形成できないヘテロ二本鎖領域をRNaseによって分解し,その結果をゲル電気泳動によって解析する. DGGEはこのヘテロ二本鎖領域が変性勾配ゲル中では野生型とは異なる位置に電気泳動される性質を利用して特殊な電気泳動装置により解析する方法である. HETではより簡便にこのヘテロ二本鎖領域が野生型より遅く電気泳動される性質を利用する. LCRは変異DNAがDNAリガーゼによって接続されないため増幅が行われない性質を利用する. PEXは変異近傍の塩基配列をPCRを利用して直接シークエンス決定する方法である.SSCPではPCRによって点変異近傍のDNA断片を増幅し,点変異によって変化している一本鎖DNAの立体構造をゲル電気泳動度の差異によって検出する.

 

 PCRの開発によって遺伝子診断に要する細胞の数は非常に少数ですかようになった.血液を数m/も採取すれば十分で,うがいをさせて,その中に漏れ出てくる口内細胞や毛髪の根本に付着している1個の毛根細胞を用いてさえ遺伝子診断は可能である.胎児の場合は母親の子宮にいる間に採取した羊水中に混入してくる少数の胎児細胞を用いて遺伝子診断を行う.