「法定成年後見」の申し立て件数

 1「法定成年後見」の申し立て件数

 成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び後見監督人選任事件)で、全国の家庭裁判所へ申し立てられた件数は、2000(平成12)年4月にスタートとしてから1年間で、9,007件に達している。

 これは、高齢化がすすみ、痴呆性の高齢者が増加したこと。公示方法が「戸籍記載一官報公告」から、成年後見登記に変わり、本人のプライバシーに配慮したものになったことや手続きがより簡単になったことなどによるものである。また、自己決定の尊重の理念や高齢者、障害者の福祉の充実に対する社会的要請が高まったことも背景にあると言えよう。

  1年間の申し立て件数のうち、後見開始の審判の申し立ては、7,451件で、前年同期の「禁治産宣告」の申し立て件数2,963件の約2.5倍という著しい増加である。

 「保佐」開始の審判の申し立ては、884件で、昨年同期の準禁治産宣告の申し立て件数671件の約1.3倍の増加であった。

 「補助」開始は621件、「任意後見監督人選任」の審判申し立ては51件であった。

 補助は、新設された制度であることから、まだ、十分周知されていないため、事件数は現在さほど多くはないが、利用ニーズはあり、今後増加するものと思われる。

2「任意後見制度」の申し立て件数

 判断力があるうちに後見人を選んでおく任意後見制度は、これまでなかった制度ということもあり、申し立て件数は比較的少ない。いままでのところ任意後見契約の登記は、2000年4月から1年間で、801件に過ぎない。

3 成年後見申し立ての動機と申立人

 「財産処分」を主な動機とするものが最も多く、次いで、「身上監護」「遺産分割協議」となっている。「介護保険契約締結」を主な動機とするものは、2%にすぎなかった。

 申し立ては、当事者本人が病院に入院していたり、老人ホームなどの施設に入所している人が最も多く、全体の62%を占めていた。家族と同居したり、在宅でひとり暮らしの人は、34%であった。

4 成年後見人等に選任された人

 「子」が、全体の40%で最も多く、次いで、「配偶者」が19%、「兄弟姉妹」が17%で、「その他の親族」を含めると90%以上が本人の親族であった。

 親族以外の第三者では、弁護士、司法書士などは10%弱であり、法人(社団法人成年後見センター・リーガルサポート、家庭問題情報センター、社会福祉協議会)が後見人に選任されたのは、13件にすぎなかった。

5 鑑定費用

 成年後見制度では、「判断能力を欠いた人」「著しく不十分な人」に対して、鑑定が行われることになっている。家庭裁判所に、成年後見制度の申し立てをすると、裁判所は医師に鑑定を依頼する。医師は鑑定の結果と請求書を裁判所に提出する。

 価格は、とくに定めはなく、医師や病院の判断による。鑑定価格は、低い方で、およそ5万円から10万円くらいで、20万円位のもあるようだ。 10万から15万円位の事例が多いという。日頃からかかっている主治医の場合は、比較的低い料金のようだ。自己負担できない人に対しては、条件付で国と自治体が補助する。

 鑑定では、判断能力を失っているかどうか、失っていれば、どの程度か、とくに財産管理能力があるかどうかがポイントになる。医師は、本人だけでなく、家族の話しを聞いたり、知能検査を行ったりして判断する。

6 成年後見登記制度

 禁治産・準禁治産制度では、氏名が明らかになるなどの問題点が指摘されていたが、この成年後見制度では、官報広告や戸籍への記載は廃止され、「成年後見登記制度」となった。登記に関する事務は、法務大臣が指名する法務局一地方法務局が行うことになっている(後見登記法2条)。

 また登記は、裁判所書記官または公証人の嘱託に基づいて、指定法務局に備え付けられた後見登記等ファイルに、法定後見(補助・保佐・後見)、任意後見に関する所定の事項を記録する方法で行われる(同4条、5条)。