新薬開発-商品開発できない製薬会社がなぜ生き残れるのか

 

 新薬の開発だが、日本の製薬会社ははっきりいってロクな薬を開発できない。一部には、三共製薬のメバロチン高脂血症治療薬)、田辺製薬のヘルベッサー(高血圧治療薬)、吉富製薬デパス、リーゼ(抗不安薬)といった素晴らしい薬もあるが、日本で開発されて世界市場で通用している薬は今挙げたものも含めて数えるほどしかないのが現状だ。これは、日本の製薬会社が世界市場での競争にさらされていないことが大きな原因であろう。日本の製薬会社は、戦中戦後と国家的庇護のもとにのうのうと暮らしてきた。複雑怪奇な薬審査システムを編み出して外国企業の日本市場への咎入を厳しく規制する一方で、外国企業の生んだ画期的な薬の販売権を獲得することで莫大な富を築き上げてきたのである。日本の市場で自足できるのだから、世界市場に通用する競争力などつける必然性がないのである。

 こうしたシステムのゆがみのツケは、結局個人消費者に回される。たとえば98年度の国民医療費は29兆651億円、99年には30兆円を超えることは確実視されている。このうち薬剤費は9兆円あまりを占めるのだが、先進諸国での医療費に占める薬剤費の割合を比べると、フランス19・9%、ドイツ17・―%、イギリス16・4%、日本29・5%と日本が突出して高い。これにはもちろん色々な原因が絡み合っているのだが、しかし最大の原因のひとつは、諸外国に存在しない薬価基準制度が医薬品費を釣り上げていることにある。競争力のない企業を存立させていくための金を、最終的に消費者が払っているのである。

薬ミシュラン』より