2014-06-11から1日間の記事一覧

〈バクトロバン〉の臨床試験

ペプチドは、第一相試験をらくらくと通った。健康なヒトの皮膚に塗布したところ、害がなかったのである。第二相試験では、実際に膿疱疹にかかっている四五人の患者に効果があった。一方、〈バクトロバン〉の臨床試験では、偽薬が使われていた。ふつうの石け…

スミスクライン・ビーチャム社が〈バクトロバン〉の販売

ヴェンターは転職の条件として、「ゲノム研究所は非営利財団にしなければならない」と、スタインパークに注文していた。そこで、ザスロフも条件をだした。新しく興す企業のその名もマゲイニン社-の立ち上げは手伝うが、「教鞭もとりたいし、小児科医として…

FDA(米国食品医薬品庁)に電話

細胞に穴をあけるメカニズムは、ペプチドがとくに耐性菌に効果がある可能性をしめしていた。これまであらゆる抗生物質から攻撃目標にされてきたタンパク質は、変えたり、置き換えたりすることができた。ちょうどパトリスークーヴァランが、パリのパスツール…

学究生活を捨て、製薬ビジネスに挑戦

実際のところ、ボマンは、生物のなかに抗生物質をさがそうとした最初の人物ではなかった。一九六〇年代、ニューヨークのロックフェラー大学の研究者ジョンースピツナジェルは、細菌を殺す能力のあるタンパク質をもつらしいウサギとテンジクネズミを発見した…

国立衛生研究所に就職

戦後早い時期のベビーブームに生まれ、ニューヨーク市立ブロンクス科学高校で学んだザスロフは、胸をときめかせて周期律を学び、家庭用化学セットをいじり、アメリカ自然史博物館に足しげく通った。コロンビア大学を優等で卒業し、ニューヨーク大学医学部で…

青カビ(ペニシリウム菌)に関する観察

ペニシリンを発見したフレミングと同様に、ザスロフは偶然を通じてこの発見をなしとげた。そして、こんどはまた妙な手法で分析されようとしていた。すぐにゲノムが、細菌のDNAを分析する殼新技術装置を用いて卜L偶然による発見とは正反対の方法でI薬の…

ヒトの治療用抗生物質の新しい系統

研究室の科学者のなかには、アフリカツメガエルを切りひらき、卵をとりのぞいたあと、カエルを殺す者もいた。だが、ザスロフはちがった。彼は不器用に彼は小児科医だったが、外科医ではなかったのだ卜よ思部を縫いあわせた。そして、研究室の汚いタンクにカ…

ウガンダでペストが流行

だが結局、「この菌株は自然に発生したにちがいない」とテノヴァーは感じるようになった。だが、ひとつ懸念が消滅すると、別の懸念が生じた。「自然に発生した株なら、それを『兵器化』するのはたやすいことではないだろうか」 二〇〇一年秋、アメリカ全体が…

クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、テトラサイクリン

こうした事実を考慮しても、マダガスカル島の菌株は深刻な警告を発していた。パトリスークーヴァランは「その菌株をもっと調査したいので、パリに送ってくれ」と、マダガスカルの同僚を説得するのに少々手間取った。ようやく入手すると、クーヴァランとガリ…

ノミの脅威

ガリマンの発見が示唆するものは、身の毛のよだつものだった。ヒトの病原菌としてこの世に登場してから二千年ほどのおいたに、ペストは世界じゅうで何度も流行してきた。たいてい都会の人口密度の高い環境で流行し、約二億人もの人々の命を奪ってきたのであ…

経ロトリメトプリム・スルファメトキサソール

まれではあるものの、非常に警戒が必要な症例も報告された。致死性の高い人類の天敵ともいえる伝染病「腺ペスト」が、薬剤耐性を獲得したという報告があがったのである。 フランスで第二帝政時代が終わったころ、疾患の世界的な蔓延を研究しようと、パスツー…

バークリー校

グラム陰性菌の「ビッグースリー」は、「アシネトバクター、クレブシエラ、シュードモナス」たった。耐性が強まるばかりのこうしたグラム陰性菌は、アメリカ国内外の病院をさんざん苦しめ、これを題材にした研究や講演会をおこなわせ、警告と恐怖をまき散ら…

アシネトバクターの予防措置

ブルックスは、培養シャーレを取りだし、そこに細菌の成長をうながす寒天培地を満たし、それをアシネトバクターが気道に感染している患者の、ベッドの頭板から一定の距離のところに置いていった。培養シャーレは、患者の病室のすべての壁とすべてのドアから…

キングズブルック・ユダヤ医療センター

ブルックリンの開業医デイヴィッドーランドマンは、どうにかしてセフタジジム耐性クレブシエラーレハイルの当初の強敵に対抗しようと、タソバクタムーピペラシリン薬を投与していた。ところが、タソバクタムーピペラシリン耐性のアシネトバクターが検出され…

ボルティモア復員軍人医療センター

アメリカでは、もっとも高い耐性率はたいてい東海岸で発生していた。グレンーモリス医師が勤務するボルティモア復員軍人医療センターでは、感染症スタッフのジュディスージョンソンが、ESBLグラム陰性菌の増加を「心底おそろしい」と表現した。しかめ面…

ブラウン大学ミリアム病院

この流行はニューヨークを標的にしているかに見えたが、世界各地からも報告があがりはじめた。一九九〇年代になると、フランス、スペイン、日本から、耐性グラム陰性菌集団発生の報告が寄せられるようになった。スイスのチューリッヒでは、ふたりの医師が一…

アシネトバクター

一九九八年になると、レハイルは「ブース記念病院内でのセフタジジム耐性クレブシェラの流行は終 284わった」と報告することができた。レハイルが、シュードモナスに誘発したイミペネム耐性もまた減少していた。消え去ったのではなく、ただ減少していたので…

ポリミキシン

一年後には、病院のほぼすべてのクレブシエラに、すべてのセフアロスポリン系抗生物質の投与で効果が見られるようになり、もっと重要なことに、イミペネムでも効果が見られるようになった。だが残念ながら、この作戦はいわばソーセージ型の風船の片端を押し…

セフタジジム耐性クレブシエラ

すがるような思いで、レハイルは、イミペネムに最後の望みをかけた。イミペネムは、彼がバンコマイシンのグラム陰性菌版と呼ぶ薬だった。これまではたいていイミペネムは効果をあげてきた。セフタジジム耐性クレブシエラやセフタジジム耐性アシネトバクター…

ブース記念病院

こうして地球規模でグラム陰性菌が進化を遂げているそのさなか、ジェイムズーレハイル医師が、二ユーヨーク市クイーンズのある病院で感染症部長に就任した。そして、アメリカ国内の病院で記録に残っているESBLグラム陰性菌のなかでも、最悪の菌に侵入さ…

セフタジジムの化学環

やがて、グラム陰性菌の大半にペニシリンの臨床効果がないことが判明した。ひとつには、薬と病原菌の両方がマイナスの電気を帯びているため、静電気反応がたがいをはねつけるからだった。また、病原菌に、ペニシリンを不活性化する酵素β-ラクタマーゼがある…

クレブシモフによる疾患の一種、フリードレンデル桿菌性肺炎

こうしたグラム陰性菌の能力は、偏った場に棲みつく傾向のせいでもあった。アシネトバクターは、気道を好み、皮膚の湿った部分にも棲みつく。クレブシェラは、胃腸管を偏愛するが、アシネトバクターやシュードモナスのように肺に侵入する道も見つける。その…

シュードモナス

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)も全耐性だったが、いまでは〈シナシッド〉とリネソリドが効果をあげるようになった。だが感染者の命を奪う全耐性のグラム陰性菌を撲滅するための薬は、まったく開発されていなかったIなにひとつ。 グラム陰性菌は、重い…