薬用不老林メイグイファの希望

 


 そんな中、幼なじみの若ハゲS君から適切なアドバイスをもらいます。

 「いかん……いかんぞ相田。時代は今、資生堂薬用不老林メイ・グイ・ファだ。毛母細胞を刺激するのはもうやめだ。もはやオーガニック育毛剤メイ・グイ・フアの時代だ!」

 中国奥地にそっと咲くマイカイバナエキスを配合した新世代の育毛剤「メイグイフア」は、今までの育毛剤とは違って畑9頭皮の改善をを目的とした画期的な製品なのだとS君は言いました。今までは毛乳頭や毛母細胞といった細胞への刺激・活性を主にした、いわば髪の毛のリポビタンDのような製品しがありませんでした。しかし、メイーグイーフアは頭皮を柔らかくして畑作りから始めようという発想です。

 しかし、これも1年ほど続けましたが額は相変わらず後退していくのでヤメました。ほんの少しばかりうぶ毛のようなものが生えるのですがそれだけです。


煙と消えた植毛代400万円

 そんな中、私のハゲ観に大きな転機が訪れます。そのきっかけは上司のTさんでした。Tさんもまたハゲの人でしたが何ら臆することをいたしません。実はTさん、直腸ガンで入院したのですがそんな時も人工肛門を見せびらかし、これからオレを渡哲也と呼んでくれと病床で怪気炎をあげる始末。しかしその時すでにTさんは、抗ガン剤の副作用で完全なつるっぱげ状態になっていたのでした。

 ところが、その後会社に復帰した時にはなんとふさふさになっていたのです。いったい何を、と思ったらあっけらかんと人工植毛の話をしてくれました。価格を聞くと400万円だそうです。しかも植毛した毛が抜けてしまうため週Iのメンテナンスで7~8万円が飛んでいくとのこと。役員職についていたTさんにしてみたらさしたる金額でもなかったのかもしれませんが、TVで気軽にCMをうっているA社のトッデモナイ商売に唖然としたものです。そして数力月後、ガンが再発しTさんは帰らぬ人となりました。火葬場でお骨を拾いながら、私は毛髪栄枯盛衰ハゲ諸行無常の心持ちになっていたのです。

薬ミシュラン』より