ひらがなと漢字の構成比率と表記基準
文章内での漢字とひらがなの構成比率は,読みやすさに大きく影響する.これは,朝日新聞の調査,認知心理学者,マニュアル制作者たちの研究成果として評価されている.だいたい,文章内の漢字の含有率は, 30%前後とされている.もちろん,句読点も含めての数値である.
漢字がそれ以上になると,版面が,黒っぽくなり,読み手に圧迫感を与える.また,逆にそれ以下になると,版面が白っぽくなり,版全体がばらけて見える.文章全体にゆるみが出てくる.
では,漢字率を30%前後にするには,どうしたらいいだろうか.以下の表記基準にしたがうといい.
ひらがなと漢字の表記基準
企業では,「スタイルブック」などで漢字で書くか,ひらがなで書くかを決めているどころが多い.ここでは,一般には,その両者をどのように使い分けているか,紹介しておぐ.
①常用漢字で書くことを基準にする
②接続詞の表記は,つぎのようにする
あるいは,かつ,しかし,すなわち,そして,ただし,なお,また,および,したがって,ならびに,ゆえに
③助動詞の表記は,つぎのようにする
ごとき,たい,べき,ようだ
④助詞の表記は,つぎのようにする
くらい,ながら,ほど,まで,ばかり,など
⑤表外字(使用が制限されている漢字)と極端な当て字は,つぎのように表記する
あいさつ(×挨拶),いんぎん(×慇懃),うちわ(×団扇),いかが(×如何),ございます(×御座居ます),でたらめ(×出鱈目)
⑤本来の意味の薄れた語は,つぎのようにする
検討してみる(×見る)
試験結果から判断してみると(×見ると)
データベースの利用を考えてみ(×見)ましょう
計算してみた(×見た)が,予測値とは開きがある
ただし,
手に取ってみて(×見て)ください
のばあい,“検討しでの意が強いばあいには,そのまま,ひらがな表記にする.また,“見る"という行為を明白に出したいときは,
手に取って見てください
と漢字を使う.
市販のパッケージという(×言う)ことになると,財務データを活用して予算を編成するという(×言う)方法もある.精密検査をしたところ(×所),ディスクドライブに欠陥があった.コンピュータで計算しているところ(×所)です.
これらの例文にみる“ところ”は,確定の順接を表す接続助詞である.一方,
コンピュータを設置する所を決める.
ディスケットは以下の条件を満たす所に保管すること.
この“所"は場所を表す名詞である.
コンピュータで作成したデータは,データシートに保存すること(×事)ができます.
ISO 9000 の目的は,このような問題を解決すること(×事)にあります.
ただし,
事の重大さに驚く.
研究費にも事欠く状態です.
のように,本来の意味に使うばあいは漢字表記にする.
⑦従来,かなまたは漢字で表記してきたケ-スでは,
つぎのようにする
出来る→できる
通り→とおり
(して)頂く→いただく
下さい→ください
欲しい→ほしい
知れない→しれない
⑧代名詞の表記は,つぎのようにする
漢字表記:私,僕,君,彼,彼女,何
ひらがな表記:あなた,だれ,どれ,これ,それ.
ここ,そこ
⑨副詞の表記は,つぎのようにする
漢字表記
案外,改めて,至って,一概に,一向に,依然,一
斉に,一番,今更,大いに,恐らく,主に,必ず,
極めて,決して,現に,今後,今度,早速,更に,
強いて,次第,重々,実に,十分に,従来,真に,
切に,随分,少なくとも,少し,全然,大体,大抵,
大変,互いに,直ちに,例えば,度々,多分,単に,
努めて,常に,同時に,到底,特に,何分,何ら,
初めて,果して,非常に,再び,誠に,万一,無論,
最も,余程,割合に
ひらがな表記
いったん,いっぱいに,せいぜい,せっかく,ぜひ,
ちょうど,とにかく,ざっと,あえて,あらかじめ,
いかにも,いずれ,いよいよ,およそ,かねて,か
なり,ことごとく,もちろん,しばらく,すっかり,
すべて,たとえ,ただ,ついに,とても,なかなか,
なぜ,ひとえに,ほとんど,ますます,まず,まだ,
むしろ,もし,やはり,ようやく
副詞の表記については,だいたいの目安として紹介した.また,企業に勤める人で,その企業に「スタイルブック」が完備されているばあいは,それにしたがうべきである.