DSM-アメリカの奇妙なマニュアル文書

 

 最後に海外の医薬品業界でおかしなものを1つだけ挙げておく。DSMという文書のことだ。

 DSMとは、構神疾患の診断名を決定するための一種のマニュアル本である。国民が皆保険に入っている日本とは違い、アメリカでは多くの民間医療保険会社が存在する。これらの会社に対して保険料の払い戻し請求をするときに、このDSMに従った基準によって「DSMラペル」というものの提出が要求されるという重要な文書である。

 しかし、この安易なマニュアル本には批判の声が多い。老練した構神科医などは長年の経験と深い洞察力、患者の何気ない仕草や表情を機敏に読みとって診断を下す。これに対してこの文書に従えば、原因が何であるのかといった問題をすべて棚上げにして、症状のみを見て診断名が下すことができる。極端なことをいえば精神科医ではなくても○×式で病名が決まってしまうのだ。たとえば多くの病気は精神的な症状を併発するが、DSMの○×式では最初から精神疾患と決め付けて病状を見るために誤診の可能性が残るのである。

 また、改訂ごとにゲイが精神疾患にされたり、自己敗北型人格障害、月経前不快気分障害などという字面だけ読んで腰がくだけてしまうようなものが立派な精神疾患として取り上げられている。こんな文書がアメリカでは一応の権威ある基準として使用されているのであり、なむかつアメリカの構神医療を直輸入する日本でも使用されているのである。

 薬も医者も審議会もメーカーも、本当にいいかげんだということがおわかりいただけたと思う。しかし、彼らに期待し幻滅するだけでは何の解決にもならない。

 すべては、われわれ消費者が、医療を神域のように扱うのをやめることから始まるのだ。

薬ミシュラン』より